ジョイスティックコントロールカーの価格だけを取り上げて考えると一般の車よりも改造費の分だけ高い。そして、高いが故に1ユーザーではなかなか手がでない。そこから日本の福祉に関するさまざまな問題点等が見事に見えてくるのである。
それらのことを含め全国でキャラバンをおこなってきたが、実際に行動に移す元気な当事者はまだまだ少ないのが現状であった。
第6節 免許に関する考察
ジョイスティックコントロールカーを輸入する前から警察庁とはジョイスティックの免許について交渉を始めた。警察庁へ訪問し写真などの資料を説明し、ジョイスティックコントロールの免許について担当者から次のような回答を得ることができた。
「障害者の社会参加を保証する上で必要な車であることは理解できる」
「運輸省がその車を認可すれば警察庁は直ちに免許の基準作りについて対応する」
どうやら運輸省が車両とジョイスティックコントロール装置の認可をすれば次のステップとして免許の基準作りには入れそうである。
97年4月28日にナンバーの交付がされ、ジョイスティックコントロール装置も補助運転装置として認められた。さあ、次はいよいよ免許である。早速5月9日には府中運転免許試験場をジョイスティックコントロールカーで訪問、担当者を乗せジョイスティックを使用しコースを回った。練習不足の割にはスムースな発進とコーナーワークを見せることができ、運転装置としての信頼性は高いという印象を与えたことと思う。
その後、全国キャラバンで忙殺される日々が続き12月の全国キャラバンが終わるまでは十分な練習をする時間もなく、ジョイスティックによる免許第1号については棚上げの状態であった。
全国キャラバンが終了し、年も変わった。1月13日に再び府中運転免許試験場を訪問。前日に降った雪の影響で「JOY−VAN」では行かなかったためジョイステイックコントロール装置の現物を見せることができなかった。そのため、リフトの右降りは危険ではないかといったジョイスティック免許以外の車両に関する話に話題が集中してしまった。「ジョイスティック免許については運輸省に確認した上で基準作りに入る」という確認にとどまった。
その後、警察庁に確認の電話を入れると驚いたことに「ジョイスティックコントロール装置については認可していないと確認している」という話になっていた。どうやら警察庁と運輸省の間で行き違いがあったらしい。直ちに運輸省に電話をいれ、直接警察庁の担当者に電話をして誤認を解いたが、縦割り行政からくる悪弊はこんな所にもでてしまった。
これで、警察庁も正式にジョイステイックによる免許の基準作りに入ったとわれわれは認識し、都内の自動車学校をジョイスティックの練習場所として確保した。1998年3月20目現在でまだ免許試験は受けていないが、技術さえ伴えばジョイスティックの免許は取得できることになったのである。
全国キャラバンの会場で参加者から免許に対する不安が挙がったのはスタッフが誰1人としてジョイスティックの免許を持っていなかったからで、前例に倣う日本人の国民気質を考えると不安になる気持ちは理解できる。
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